「生きる力」を育む、自分で作る「弁当の日」を名古屋に!
現在、文科省の学習指導要領には理念として「生きる力」がうたわれています。そこでは、学力の育成とともに「道徳教育や体育などの充実により、豊かな心と健やかな体を育成する」とされています。
「生きることは食べること」。「自分で食べる力」は「生きる力」を育てる、ともあります。私は「生きる力」を身につけるうえで、食に関する能力、すなわち、献立を考え、調理し、楽しく食べるということがとても大事なことではないかと思い、学校に「弁当の日」を設けてはと考えました。
学習指導要領では望ましい食習慣の形成として、小学校家庭科、中学校技術・家庭科の授業では「五大栄養素の働き、地域の食材を生かした調理」など、食事の役割や栄養素を考えた食事のとり方、調理とあります。大変重要なことだと思います。
食を授業で学ぶことも大切ですが、それを子どもと保護者と一緒に取り組む運動として、私は、子どもたちが自分で作る「弁当の日」を提案します。
この「弁当の日」は、2001年、香川県の滝宮小学校・校長(当時)だった竹下和男先生が始めた取組みです。現在では全国で800校以上で取り組まれています。
先生は『子どもたちの生きている時間の中で、学校や塾に関する「まなびの時間」は増えているが、生きていくための基本的な“衣・食・住”に関する「暮らしの時間」は減っている』と感じ、子どもたちに「暮らしの時間」を取り戻した方が良いと考え「弁当の日」の取組みを始められました。
メリットとしまして
- 子供に任せて誉めることにより、子供の自立心が育つ
- 自分で作ることにより、当たり前のように食べている給食や親に対する感謝の気持ちが育つ
- 親の立場からも子供に任せればできるんだ、と気づき、逆に言えば親が育つ
- 家庭の絆を生む。例えば、卵焼きを作って弁当に詰める、2・3切れ入れるが、残りは食卓に出てお父さんやお母さんが食べる。すると、喜ばれ、これが家庭の絆になる。
「弁当の日」は、まさしく学習指導要領で言われているような「生きる力」がすべて詰まっていると思います。
自分で献立を考え、買い出しをして、調理し、弁当箱に詰め、そして頂く。献立の組み合わせをどうしようか、どういう彩りのものを入れようか、自分で考える。それを弁当で表現する。「生きる力」そのものだと思います。
大人は子供が包丁を使い、火を使うことを「危ない」「失敗したら」などと心配し、あるいは親が「やった方が早い」「教えるのは面倒」と手を出してしまいがちです。自信がなくて親に手伝ってもらう子供もいます。でも「全部、自分で作った」という友達を見ているうちに「次は自分だけで作ってみよう」と決心するようになります。だから、良いのです。子供には自分で伸びようとする力が備わっています。
子供が作る「弁当の日」を実施する学校の中には、状況に応じたアレンジを加えているところがあります。例えば、学年ではなくクラス単位でやる、遠足の日にやってみる。作ってもらった人に感謝の気持ちを伝える、弁当を作らないけど家で朝ご飯に挑戦する、といったスタイルもあります。
ここで、神戸市のある小学校で「弁当の日」を行った時のものですが、紹介します!
【児童の声】
「お母さんはいつも大変だということがよくわかった。見た目は簡単そうだが、やってみるとリンゴの皮むくのも、卵を割るのも難しかった。いろどりが悪く、緑が少ないので次は見た目もきれいで味も美味しいお弁当ができるように頑張りたい!最後の弁当の日には最高のものが作れるようにしたい!」
【家庭からの声】
「正直言うと、朝の忙しい中、時間をとることに面倒くささを感じたのですが、子供はとても意欲的でした。今まではあまり料理や包丁の使い方を教えていなかったことも実感し、親としてもいろいろ見直す機会になりました。子供の意外な面も発見できたかな、と思いました。」
このように、弁当箱の中に“感謝の心”や“思いやり”といった道徳教育・家族との会話が増えたり、という一家団欒・親が学ぶことがあったりと、この「弁当の日」に沢山の教育が詰まっていると思います。
新しいことを実施するのは大変なことです。しかし、実施するだけの意義はあると思います。
家庭科や技術・家庭科の授業の中で、弁当に取り組めるようにしたり、総合学習の中で買い出しから弁当作りまでをやってみる、などの取組みもできると思います。是非、進めていただきたいと思います。
そして、PTAにもご協力いただき「弁当の日」の取組みが実現に向けて前進していただけるように強く要望いたします!